損害賠償の根拠法となる自賠責法と民法上の不法行為の違い
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事故が起こった場合などに損害賠償を請求することになりますが、損害賠償請求は何かしらの不法行為を犯した人に対して行うものですので、根拠となる法律があります。
根拠となる法律を理解することで、自動車保険の「なぜそうなるのだろう?」という疑問も解決するものがありますので、本記事では自動車保険の損害賠償の根拠となる法律を紹介したいと思います。
原則、すべての交通事故は民法上の不法行為
交通事故の損害賠償の根拠となる法律は民法上の不法行為による「不法行為責任」というものです。
民法の不法行為とは以下の条文によるものです。
- 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
要は故意や過失があって人の権利や利益を侵害した場合はその損害の責任を取らなければならないというものです。
交通事故でけがをさせたり、ものを壊したりした場合も民法の不法行為にあたります。他人にけがをさせる、ものを壊すというのは相手の権利を侵害するものなので当然ですね。
また交通事故の場合、走行をしていれば加害者側にまったく過失がないということもほとんどないといってよいです。
そのためほとんどの加害者は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害している」ということになるので、民法の不法行為をしているということになり、不法行為責任を負い損害賠償を支払わないといけなくなるんですね。
逆に被害者は「不法行為に基づく損害賠償請求権を有する」ということになります。
民法上の不法行為に基づく損害賠償額のうち、自賠責保険の支払上限を超えた金額を補償するのが任意保険となります。
人身事故の場合は自賠責法により責任が課せられる
交通事故の中でも自動車事故の人身事故の場合は自動車損害賠償保障法(自賠責法)という法律の「運行供用者責任」を負うことになります。
- 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
- ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
民法の不法行為と似ていますが、「自動車を運行の用に供する者」(自動車事故)と、「その運行によつて他人の生命又は身体を害したとき」(人身事故)と定められている点が異なります。
ちなみに「自動車を運行の用に供する者」は直接の加害者となる運転者だけではなく、加害車両の所有者も含みます。
自賠責法の運行供用者責任に基づく損害賠償額を支払うのが自賠責保険なのです。
また、民法と条文は違いますが、過失がある場合にのみ損害賠償責任を負うというのは自賠責法も同じです。
このような内容になっていることから自賠責保険では加害者に過失がない「被害者に100%過失があるケース」では保険金が払われないのですね。
自賠責法と民法の不法行為の違い
2つの法律にもとづく損害賠償は支払われる保険が異なるというのもありますが、
大きな違いは過失の立証をどちらがするかという点です。
自賠責法は人身事故の被害者ということで被害者保護の性格が強いため、
加害者が過失のなかったことを証明する責任があります。
一方で民法の不法行為の過失の立証は被害者が行う必要があります。
- 自賠責法の運行供用者責任:加害者が自身の過失がなかったことを立証する
- 民法の不法行為:被害者が加害者に過失があったことを立証する
想像するとわかりますが、交通事故で加害者に過失があったことを立証するのはなかなか大変です。
自賠責法では事故の被害者を救済するという観点から被害者に過失の立証をさせることはせずに加害者に過失がなかったことを立証させるということになっています。
また自賠責保険は被害者に大きな過失がない限り、保険金額は減額されず全額支払われます。
過失は加害者が立証するということと、被害者に大きな過失がない限り減額されないというルールにより、自賠責保険は被害者の損害賠償請求額が請求通りとなることが多くなっています。
加害者本人以外が損害賠償請求される場合
損害賠償の対象は基本的には事故の加害者となりますが、加害者本人以外が損害賠償を請求されることもあります。
■加害者本人以外が損害賠償を請求される場合
- 使用者責任:従業員が交通事故を起こした場合
- 監督者責任:未成年が交通事故を起こした場合
従業員が営業車などで業務中に起こした事故については、その従業員の使用者は使用者責任があるとされ、損害賠償を請求されることがあります。
また未成年など法的な責任能力がない人が事故を起こした場合はその未成年の親などに監督者責任があるとされて損害賠償請求をされることもあります。
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