人身事故の罰則とひき逃げした時の罰則

公開日:2015年10月25日

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ドライバーに課せられる最も重い罪の1つに「ひき逃げ」があります。

人身事故を起こした場合にその場から立ち去るという行為で、事故を起こしてしまったパニックや自分を守りたいという気持ちから逃げてしまう人がいるようですが、罪が重くなるだけでなく、何より被害者の方の命の危険もあるので、まずは救護活動をすべきで絶対に逃げてはいけません。

ひき逃げの罪はすでにかなり重いですが、飲酒運転と同様に、さらなる厳罰化を進めて絶対に逃げない方が得だとならないとひき逃げはなくならないのかもしれません。

厳罰化を進めると、その犯罪そのものの件数は減るものの、罪と罰のバランスが崩れることでその他の違反行為への影響も懸念されるので、慎重に検討をする必要がありますが、かなり悪質な犯罪ですので何かしらの対処が必要と思われます。

人身事故の罰則と行政処分

  • ひき逃げには、「人身事故を起こしたこと」と「被害者を置いて逃げたこと」の二重の罪がある
  • 刑事罰だけでなく、民事上、行政上の責任もある

ひき逃げをすると、罰則としては人身事故を起こした罪にその場から逃げたという罪が加算されるようになります。悪質性も高く懲役刑は免れません。

通常の人身事故の場合、自動車運転過失致死傷罪や危険運転過失致死傷罪が適用されることになり、以下の罰則が科せられることになります。

  • 自動車運転過失致死傷罪:7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金
  • 危険運転致死傷罪:けがの場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期刑(最低20年の懲役)

被害者を死亡させてしまった場合は懲役刑となりますが、けがなどの場合は罰金で済むこともありますので、自分のためにもまずは被害者を救護して少しでも症状を軽くすることを考えた方が良いです。

また、ここまでは刑事罰の話ですが、被害者がけがや死亡をしている場合、民事上の責任である損害賠償責任を負うことになりますし、行政上の処分として違反点数も課せられることになります。

■被害者を死亡、けがをさせた場合の違反点数

被害者の状態 違反点数 罰則(目安)
死亡 20点 7年以下の懲役・禁固
治療期間3月以上の重傷事故
または特定の後遺障害が伴う事故
13点 懲役・禁固または50万円以下の罰金
全治30日以上3か月未満のけが 9点 50万円以下の罰金
全治15日以上30日未満のけが 6点 50万円以下の罰金
全治15日未満または建造物損壊 3点 30万円以下の罰金

民事上の責任である損害賠償金額は、被害者のけがの状態や収入、年齢などによっても変わりますが、任意保険の対人賠償、対物賠償を無制限にしておけば、自分で支払う必要はないです。

被害者が死亡したり重度の後遺障害を負っている場合は損害賠償金額も高額になることが多く、任意保険に加入していない場合は人生をかけて支払っていくような金額になります。

損害賠償金額が全額保険から支払われても、上述した刑事罰や行政上の責任を負うことになりますので、自分や家族の生活はかなり変わることになりますが、少なくとも損害賠償金の心配はしなくてもすむように任意保険には絶対加入すべきです。


ひき逃げの罰則

「ひき逃げ」、つまり人身事故を起こしてその場から立ち去ると、上記の人身事故の罪に加えて以下の罪が加算されます。

  • 負傷者の救護と危険防止の措置違反:5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 事故報告の義務等違反:3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
  • 現場に留まる義務違反:5万円以下の罰金
  • 殺人罪:死刑・無期懲役・懲役5年以上

まずは負傷者の救護と危険防止の措置違反として、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金があります。

また、事故報告の義務違反で3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金、現場に留まる義務違反で5万円以下の罰金、場合によっては殺人罪で死刑・無期懲役・懲役5年以上となることもあります。

このことからも許されない悪質な犯罪であることがわかりますし、逃げることでさらに罪が重くなることがわかります。


飲酒運転とひき逃げの罪のバランス

ひき逃げが劇的に減らない要因の一つに飲酒運転との罪のバランスがあります。

別の記事で紹介していますが、飲酒運転は厳罰化されており、現在の道路交通法違反の中では最も重い罪の一つといえます。

飲酒運転をして死亡事故を起こしたら、人生が終わると思ってよいでしょう。

また飲酒運転の場合は運転者だけでなく、同乗者、車両提供者、酒類提供者、お酒をすすめた方と多くの人が罪に問われることになります。

飲酒運転の厳罰化により、飲酒運転の件数は確実に減っているので、それ自体は良いことなのですが、飲酒運転で事故を起こした際に、一度ひき逃げをして酔いが醒めてから出頭するという人がいるようで、その罪のバランスが問われています。

先ほどひき逃げは逃げるほど罪が重くなると述べましたが、飲酒運転に限っては一度その場から逃げて飲酒運転の事実を隠ぺいしてからひき逃げで捕まった方が罪が軽くなってしまうケースもあり、「逃げ得」の状態になってしまっています。

ひき逃げは警察の捜査の手を煩わせるだけでなく、なにより被害者の救護が満足にされずに被害が拡大する恐れがある大変悪質な行為です。

今後はこのような逃げ得を許さない、更なる厳しい措置をひき逃げにはしてほしいものです。

罪と罰のバランスの問題ですが、このような状況になってしまっている以上、飲酒運転の罪を軽くするかひき逃げの罪を重くするしかありません。

警察はメンツをかけて飲酒運転撲滅に取り組みある程度効果も出ていることから、飲酒運転の罪を軽くすることは現実的にはありえないのではないかと思いますので、ひき逃げの罪を重くする方向で法律が変わっていけば良いと考えます。


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